神鋼神戸石炭火力発電所の環境影響評価書案に対する神戸市長の「評価意見」が8月12日に出された。連絡のつくごく少数の範囲で「見解」を発表したが、非常に不十分で、誤解を与える部分もありましたので、検討して補強したものを発表したいと思います。したがって、先に発表したものは、破棄していただきたいと思います。

神鋼神戸石炭火力発電所環境影響評価書への
神戸市長評価意見書に対する見解

1998年8月14日
火力発電所問題を考える市民ネットワーク

  1.  神戸市長評価意見書は、「審査会答申書」そのものである。環境審査会答申書は、「おおむね適切」としているが、「手続きにそって適切に進められた」としているだけであり、多くの疑問や要望意見をつけ、条件付きの「適切」である。
     この条件は、関係住民からの「意見書」や「口述意見」を反映したものであり、この条件の解決こそが重要である。

  2.  「答申書」をふまえて私たちは、12日に県知事・神戸市長宛に「要請書」を送付した。答申で出された疑問・要望意見の一つ一つが実行されるよう、事業者に確認をとった上で、意見書に反映させるべきで、事業者任せにするのでなく、出来うる限りの努力、さらに一歩踏み込んだ取り組み=事業者が確実に実行する確認が出来ない場合は、実行出来る段階まで建設を延期させる決断を求めた。
     市長評価意見は、「事業者に確認をとった上で反映」されていない不十分なものである。

  3.  12日午後に入手した資料によると、国の電源開発計画が改訂され、石炭火力発電所が2010年4400万キロワットから3600万キロワットに下方修正されており、今回の神鋼石炭火力発電所建設計画は、国の電源開発計画を超えることがわかった。国の政策が変更され、電源開発計画や温暖化防止対策と矛盾する計画は、「見直す」のは当然である。

  4.  環境審査会答申書についていくつかの問題点を指摘しておきたい。

    1.  「他の石炭火力発電所の環境保全対策と比べても遜色無く」と言う表現が見られるが、他の石炭火力発電所とはどこか?碧南火力発電所はNOx・SOxともに15ppmにする計画であり、神鋼石炭火力発電所の24ppmを大幅に下回る環境保全対策となっている。

    2.  大気質について、「神戸市が行った広域的なシュミレーションにより、H17年時点で環境基準を満足する」としているが、自動車排ガス規制対策が強化され100%実施された場合を想定している。自動車排ガス規制対策が少しでも狂えば、環境基準をオーバーすることは明白である。

    3.  「電力転嫁の考え方に立てば、・・・神戸市域に計上される二酸化炭素排出量の増加に直ちに結びつ」かないとしているが、神鋼は説明会などで、市街地に建設するメリットとして送電ロスが少ないなど神戸市域への電力供給を強調しており、電力転嫁の考え方に立てば、200万トンすべてが神戸市域に計上されることになる。

    4.  「現在の段階では、温暖化防止の貢献の程度を数値的に示すことは困難であり、一般的な判断基準とならざるを得ない」としているが、前述したように、国の電源開発計画の改訂により、神鋼石炭火力発電所は国策を超えており、一般的判断基準でも温暖化防止対策と逆行する事が明白である。

    5.  重金属、公害被害者との関連についての記述が欠落している。特に、神戸市小児ぜん息等調査事業(旧指定地域のみ対象)によると、H9年度は前年度より85人増加し617人になり増加傾向を示している。14歳以下と60歳以上で43.3%を占めている。旧指定地域以外での小児ぜん息患者の多発も口述意見で出されており、「本事業の周辺地域の環境の状況は依然として厳しいことから、特段の環境保全上の配慮が必要」であれば、神戸市域全域への調査事業拡大など、継続的健康調査実施を指摘してほしい点である。

以上